甘味による時間差攻撃 |
コマンタレヴ。 タイのホテルに3年前に一人で泊まったときの事であるシルブプレ。ホテルに着いたのが午前1時。ヨナカにオナカが空いてルームサービスのヤキソバを頼んだ。120バーツ、360円である。ステンレスの半球形のカバーみたいなフタを取ると、中からプリプリのエビがライスヌードルの上に一面に乗っかったそれが現れたよトレビアン。ニポンで頼んだら5倍プラス税サとか取られそうな雰囲気があった。さあタイで深夜のエビ退治。南海の孤島の決闘、ゴジラ対エビラ!なんて35年前の少年マガジンのタイトルは頭に浮かぶ。バックリと食いついて、麻酔弾をくらったゴジラのように目を白黒させた。『アマイアマイアマイアマイ』みたことのない戦後の闇市の茹でアズキ売りの口上がボケた頭いっぱいに広がったヨ。そしてその甘みの隙間を縫って、強烈なタイの青唐辛子の辛みが舌にバンカーバスター攻撃をしかけてきた。 薬味4種盛りを見てさらに腰を抜かした。この辛い辛い甘い甘い上にさらにトッピングせよと、唐辛子赤青2種類の酢漬けを刻んだもの、真っ白なアジノモト、そしてザラメ砂糖が所狭しと並んでいる。一度死んだ命だ、もう一度死ねいとばかりにそれらを一通りかけて、南アジアの夜の絶叫夜食とあいなった。なんでこんなに甘いのか、不審に思って次の晩ももう一度同じものを今度はレストランで頼むと、やはり甘甘エビエビ焼きそばが登場した。どうもこの甘さがタイ料理の一種のデフォルトであるらしい。大変恐れ入った。 3年たった先週、台所に立った私はオゴソカに100グラム99円の輸入豚ロース肉厚切りを焼いておった。中が半生でジューシーな状態で引き上げ、少し時間をおいて切ると、真ん中がほのかにピンク色した肉汁たっぷりウマウマそうな豚肉のソテーが出来上がった。しかし塩こしょうとお醤油で食べてみるとつまんない味である。所詮輸入ものはだめだなあ、と思いつつもそこに欠けている味をどうてっとり早く補うか、5秒ほどあたりを見渡した後に私はハチミツの容器をとりあげ、ポークソテーの上にトローリ垂らしてやった。絶妙な旨さに一瞬で変身したのに目を見張った。 そして今夜、まさしく今夜、鶏の唐揚げの残りをスライスして夜食のサンドイッチを作っていて、ここに神が降臨した。鴨のオレンジ煮の皿が目の前に浮かんだのだ。しかしオレンジを切って居る暇もなく、オレンジもない。そこで私は冷蔵庫から恐ろしいものを取り出した。『肉のハナマサ』で買ったベルギー製の暗い色をしたママレード、である。これをパンの片側にたっぷり塗りつけて、鶏のスライスをのせたパンの上に覆い被せた。イエス、タカスクリニックという感じでぴったりマッチした味になった。タイの甘い砂糖ヤキソバから3年の時空を超えて、甘いサンドイッチが我が家の深夜のキッチンに降臨されたのであった。セシボン! |
by chiyo68
| 2007-08-04 10:07
| ちよご飯
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